はじめに 歯周病(歯槽膿漏、歯肉炎)の治療はむし歯治療とちがい、「歯医者任せ」では不可能です。 それは、歯周病という病気の原因が、毎日の食生活やブラッシングをはじめとする「あなたの暮らし方」にあるからです。糖尿病や高血圧と同じ生活習慣病であるため、家庭療法が大切になります。 そして、治療と再発予防、さらには抵抗力強化が同時進行しなければ、歯周病が治ることは望めません。
歯周病とは? まずは、歯周病と戦うにあたり、対戦相手をよく知ることからはじめましょう。 敵を知り、己を知ることが大切です。 敵=歯周病は歯肉とその下にある歯を支える骨(歯槽骨)の病気です。 この病気は取り残した細菌によって引き起こされる細菌感染症という側面があります。 したがって、原因細菌を徹底的に除去する方策が必要となります。 己=歯周病は口腔ないに常在する細菌に対する身体の抵抗力、防衛力が低下することきっかけに発病する病気という側面もあります。 したがって、歯肉や歯槽骨という局所の抵抗力をつける事と同時に、全身の抵抗力、免疫力をアップさせる必要があります。
最近では、TVや新聞・雑誌等多くのマスコミで歯周病の話題取り上げられるようになってきました。同時にブラッシングの話題も増えてきたように思います。 しかしながら、その中心となるのが「汚れ落とし」としてのブラッシングです。 「汚れ落とし=細菌除去」ですから、確かに一番大切な事ですが、こと歯周病治療に関して言えば、これだけでは片手落ちです。 ブラッシングには衛生状態向上とともに「口腔機能を賦活化」するという大切な役割があります。
「フォーンズ法・変法」の効果 ブラッシングのもう一つの大きな役割は、歯周組織の強化です。 当院でも、そのために「突っ込み振るわせ磨き」に先立って、「フォーンズ法」を実施してもらうよう指導しています。あまり耳慣れないブラッシング法かも知れませんが、時折健康雑誌などに登場することがあります。日本語で「描円法」と訳され、外側の歯肉を大きく円を描くようにグルグルとブラシを動かす方法です。
しかし、このフォーンズ法、歯肉の血液循環を速やかに改善させますが、治療開始初期に、図の通りに行うことは困難です。悪化させる結果となります。 当院でお伝えしているのはこの変法です。オリジナルのフォーンズ法は口腔容積の小さい日本人には不向きです。また、毛先でグルグルやってしまうと、弱った歯肉には逆効果。擦過傷をつくり、すぐに腫れてしまいます。歯肉の改善に合わせて、オリジナルのフォーンズ法へ変更していきます。 用いるブラシも通常の3列ブラシではなく、2列(時には1列)の非常に軟らかいブラシで、歯肉を広範囲に「撫でるように」「刷毛でそーっとはらうように」ブラシを運びます。 毛先で擦らず、毛束の腹の部分ではらうように、撫でるように丁寧にブラッシングします。 重症歯周病の治療初期であっても、上顎の天井の部分(口蓋)の真ん中は腫れていることはありません。 また、個々の患者さんの状態を診て、「フォーンズ法・変法」が可能な部分を探し、実地指導しています。 上下、裏表を1周か2周します。その前後のデジタル口腔内写真を比較してもらいます。 すると、全てのケースで歯肉の血液循環の改善がはっきりとみられ、水っぽく腫れた「浮腫」が引き、歯肉の色も形も変化してきます。血管一本一本の色が鮮やかになり、走行状態が明瞭になります。 たった1?2分の間の出来事です。 以下にその変化の写真を掲載します。 ホームページ上の写真精度ですので分かりにくいかも知れませんが、実際に見ていただくと、皆さんその効果を実感していただけます。 ただし、非常にデリケートに行わなければいけない方法ですので、いきなり闇雲に歯肉を擦ると、前述しましたが確実に悪化します。 「口腔内写真」の意味 口腔内写真を詳細に観察して、その人に合ったフォーンズ法・変法の実地指導を受ける事が必須です。 私たちは口腔内写真を内科の先生がルーティーンに行う血液検査と同じと考えています。 歯科における大切な「検査」です。デジタル化することで今まで20年以上取り続けてきたスライド写真の比較では気付かないことが多く判ってきました。
とは言っても歯肉や歯槽骨は体の一部分。全身状態が悪いままでは歯周病は改善しません。 「三大栄養素=水・空気・太陽光線」が大切です。水がなければ人は生きていけません。解毒にも良質の水は大切です。太陽光はカルシウム代謝にとって大切といわれています。そして、空気・酸素が血管を通って全身の隅々にまで行き届かなくては、病気の改善は愚か、正常な日常生活を送ることも出来なくなってしまいます。 効果的に全身に酸素を取り入れる方法として、腹式呼吸法があります。日常の色々な場面で、簡単に、短時間で、誰にも気付かれずに実行できる方法です。是非実践してみたください。
現代人は、様々なストレスにさらされて生きています。 気分を奮い立たせるような適度なストレスというものもあるのでしょうが、過剰なストレスは肉体を衰えさせ、心も萎えさせてしまいます。 そんなストレスにより、歯槽膿漏の悪化に苦しんだ方の記録をご覧下さい。
【症例】 昭和18年生まれ、男性、会社員。 患者さんは古くから、私達の医院へ通院されている方です。当初は虫歯の治療が中心でした。 しばらくの間、安定した状態を保っていましたが、徐々に歯槽膿漏の症状が見られるようになりました。 年齢とともに、会社での地位も上がりますが、同時に責任も重くなって来ます。 「定年退職」が視野に入ってきた59〜60歳ごろ。毎月のようにあちこちの歯肉が腫れて来院していました。 「納期が迫って忙しくて…」「出荷のために残業が続いて…」「部下の教育が難しくて…」等々、仕事上のストレスにさらされる毎日でした。 十分とはいえませんが、けっしてブラッシングがまずい訳ではありません。確かには並びは悪いのですが、それなりにうまくブラッシングし、生活習慣にも気を配っていました。 しかし、それでも頻繁に「腫れる」のです。