~ステーキと炊きたてご飯のどちらが好きですか?~
「ステーキはばりばり噛めるけれど、ご飯が噛みにくい」という場合があります。
その逆のケースも考えられます。
この場合、どちらが好きか?にあわせて入れ歯を仕上げていくことが大切です。
古くから我々歯科医の間には、総義歯の噛み合わせと人工歯の形態、人工歯排列方法についての論争があります。大家といわれる先生が考案した理論とテクニックがいくつかあります。
そして、それぞれが派閥を形成し、お互いの正当性を主張し合ってきました。
私も数々の理論とテクニックを学んできました。そのいずれもが大変素晴らしいものです。
しかし、実際の臨床では同じ方法で、同じように仕上げても「Good」という患者さんと「No」という患者さんの両方がいらっしゃいます。
「違いは何だろう……?」色々悩み、試行錯誤してきました。
患者さんの顎の運動機能の読み違えだろうか…?技術的なミスだろうか…?等々、悩み続けてきました。
確かに、これらに原因がある場合もありますが、どうもそれだけではない様な気がしていました。
そして「義歯の結果は患者さんの食習慣、好み、嗜好などに大きく左右される」ということに気付きました。
つまり、「患者さんは義歯に何を求めているか?」を良く知らないで、歯科医が思う「よく噛める入れ歯」を作っているからなのです。
「ジックリ噛んでご飯の甘みを味わいたい」という人に「ステーキがさくさく切れる入れ歯」を作っても好みに合いません。逆もまた然りです。
メタルブレードティースの技工
ステーキでもよく噛めるメタルブレードティース使用の無口蓋義歯
じっくり味わう陶歯使用のCPデンチャー/無口蓋義歯
誰もがステーキを食べたいわけではなく、誰もが漬物好きな訳ではないのです。
こんな簡単なことに気付くまで数年を要してしまいました。
ステーキをバリバリ、むしゃむしゃ食べたい人、炊き立てご飯の甘味を味わいたい人、白菜やナスの漬物を美味しく食べたい人、焼き鳥で一杯が大好きな人等々、食の好みは十人十色。
好みにあった、ジャストフィットの血の通った入れ歯を仕上げる努力を、一緒にしていきましょう。