現代人は、様々なストレスにさらされて生きています。
気分を奮い立たせるような適度なストレスというものもあるのでしょうが、過剰なストレスは肉体を衰えさせ、心も萎えさせてしまいます。
そんなストレスにより、歯槽膿漏の悪化に苦しんだ方の記録をご覧下さい。
【症例】
昭和18年生まれ、男性、会社員。
患者さんは古くから、私達の医院へ通院されている方です。当初は虫歯の治療が中心でした。
しばらくの間、安定した状態を保っていましたが、徐々に歯槽膿漏の症状が見られるようになりました。
年齢とともに、会社での地位も上がりますが、同時に責任も重くなって来ます。
「定年退職」が視野に入ってきた59~60歳ごろ。毎月のようにあちこちの歯肉が腫れて来院していました。
「納期が迫って忙しくて…」「出荷のために残業が続いて…」「部下の教育が難しくて…」等々、仕事上のストレスにさらされる毎日でした。
十分とはいえませんが、けっしてブラッシングがまずい訳ではありません。確かには並びは悪いのですが、それなりにうまくブラッシングし、生活習慣にも気を配っていました。
しかし、それでも頻繁に「腫れる」のです。
定年前の口腔内の状態
特に上の奥歯の裏側が頻繁に腫れていました。この写真でも右上裏表の腫れと膿みの出口がわかります。
この後、結局数本の歯を失う事になってしまいました。
平成16年3月。とうとう定年退職の時がやってきました。
その直後から、患者さんはストレスからの解放による体調の改善を自覚するようになりました。
歯肉もまた然り。あれほど腫れと痛みに苦しんだ事などどこ吹く風。
急性症状が全く起こらなくなってしまったのです。
定年退職後の状態
ブラッシングの状態には大きな変化はなく、所々磨き残しも見られます。しかし、歯肉の引き締まりが進み、上顎前歯の間のすき間は大きくなり、上顎奥歯裏側歯肉の姿も変わってきました。
結局、定年退職後は一度も急性の腫れを起こす事なく、今日まで安定した状態を維持しています。
このように、ストレスが身体に与える影響というのは非常に大きいという事がわかります。
歯肉というのは特に敏感な組織です。体調変化のバロメーターにもなりますので、毎日歯肉を詳細に観察する事を習慣にしてください。