私たちはインプラントを積極的に取り入れているわけではありません。
だからといって、否定するつもりは毛頭ありません。
「インプラントのその後」をカバーできる技術をマスターした上で行う事が必要であると考えています。
事故やケガで突発的に健康な歯や顎の骨を失ってしまった場合、骨移植やインプラントは非常に有効な治療法と思います。
しかしながら、生活習慣病であるむし歯や歯周病で歯を失ってしまった場合には、ちょっと注意が必要と思います。
「神から授けられた大切な自分の歯を守れなかった」訳ですから。
インプラントはあくまでもチタン製の人工物です。自分の歯以上の臓器になる事は不可能なのです。
この人工物を自分の歯と同じように長持ちさせるためには、今までの生活習慣、歯や歯肉をはじめ健康に対する考え方を180°転換する必要があります。
当院の取り組みとして
「インプラントのその後」として、ある患者さんのインプラント除去後のフォローについて、症例を通してご説明いたします。
『インプラントのその後』
患者さんは初診時(平成8年)66歳男性で「右下インプラントの沈下による痛みと義歯の不具合」を主訴に来院しました。
来院時は脳梗塞の後遺症による右側片麻痺が残っている状態であった。
初診時X線所見
左上インプラントは来院時すでに除去され、不安定な義歯が装着されました。
インプラント体とともに大量の骨も失うこととなりました。
治療用義歯を作製し、偏位したアゴの位置を正し、狂った咀嚼機能と顔貌の回復を図りました。
インプラント除去後の口腔内所見
治療用義歯装着状態
新義歯製作途中
人工歯排列状態
完成した上顎新義歯と下顎新義歯
現在の状態
自家製ミリングアタッチメントと金属製人工歯を使用。噛み合わせは安定し、咀嚼効率に優れた切れ味の良い義歯を装着することが出来きました。
新義歯装着後、患者さんは右側片麻痺の影響は若干残るものの、車も自分で運転し、ゴルフや会食等にも積極的に出掛ける毎日を送られています。
顔貌や表情の変化をお見せできないのが残念ですが、初診時の険しい表情から、柔和で穏やかな表情に変わっています。