銀歯と白い歯

保険治療と自費治療の違いに「白い歯か否か」が良く言われる。
確かに、国際化社会では、この一点だけで「その人のランク」を決められてしまう場面も多々あろうかと思う。
「自己管理能力のレベル」を判断されてしまう。

白く、美しい歯と歯並びは、人を積極的にするし、周囲にも心地よい雰囲気を与える。

しかし、それだけの問題ではない。
保険の銀歯には素材としての決定的弱点が複数ある。
特に中高年以降には被害甚大だ。

人の歯は、年齢と共に磨り減ってくる。
中年以降になると、人体で最も硬いエナメル質が磨り減り、象牙質同志で噛むようになる。
(私は、この違いを、エナメル質年齢、象牙質年齢と呼ぶことにしている。)
象牙質年齢に達した人の歯に、保険の銀歯を用いて治療をする場合、歯周病の悪化、進行が加速する。

事実、私はこの点が原因で歯を失って行くケースを何度となく目にしてきた。

「保険の材料も自費の材料も機能は同じ」という歯科医師が実に多い。
これも、ほとんどの歯科医師が技工を行わないために、気付かなくなっている事である。

自ら技工を行っていれば、この保険金属の劣悪な性能、硬さ、磨り減り方の酷さを痛感するはずである。
40代までのエナメル質年齢期であれば持ちこたえる事ができる。
しかし、それ以降は要注意である。

私自身も、学生時代にこの金属を使って治療を受けた経験がある。
噛み合わせ調整や、自分の歯との継ぎ目の手入れ等々、プロフェッショナルである私でも、維持して行く事に難儀した。

「白い歯」に用いる素材も、セラミックスとプラスティックでは、その性能、精度、磨耗の仕方等々、慎重に選ばなければいけない。

同じセラミックスでも、製品によって、硬さや緻密さ、磨り減り方は大きく異なる。
技工士さん任せで決める事は、絶対に避けなければならない。

車や家電製品の性能ですら、カタログデータだけでは推し測れない。
ましてや、自分の体の一部となる歯の治療に際しては、慎重になって欲しいものである。

治療をする側も、受ける側も。

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