咀嚼治療・1 『噛めないって辛い』お話

『噛めないって辛い』お話

①噛めない時代・第一期

私は、両親共働き家庭のひとりっ子。

乳歯の時代から虫歯が多く、度々歯医者さんのお世話になっていました。

「虫歯の洪水」時代のど真ん中に幼稚園・小中学校時代を過ごしました。

当時、虫歯は出来たら治療するもの。

予防って何?という時代。

治療も、痛くなくなれば、穴が有ってもそれで良し。

ご飯が食べられて、野球ができればOK、でした。

キチンとした食生活とは無縁の少年時代。

この頃、食事が遅いと家族や学校の先生からよく注意されました。

ツギハギ治療の歯では、仕方ありません。

そして、毎日が下痢・軟便の連続。

②噛めない時代・第二期

そんな私が、大学生になり、一通りの治療を受け、友人たちと同じように食事ができるようになりました。

・・・・・と思っていました。

痛くなく、冷たいものがシミルこともなく食事ができる様になったのです。

しかし、相変わらずの下痢・軟便の毎日は続きます。

違ったのは、友人たちより食べるのが速くなっていたこと。

上手く噛めない子供時代は、食べるのが遅いのはわかります。

よくよく注意してみると、友人たちより私の方が噛む回数が少ない。

ザクザク数回噛んで丸呑みです。

繊維の多い野菜は大の苦手。

ニラ、茄子、セロリなんて食べ物じゃない。

とにかく、野菜料理は大嫌い。

当時、野菜料理で食べられたのは、レストラン「デニーズ」のコールスローサラダだけ。

細かく刻んだキャベツやハムをマヨネーズトレッシングで和えたもの。

飲めるサラダですね。

大事な成長期にこの状況では、味覚も未熟なままでした。

③咬む事と噛める事

こんな食生活、味覚と腸の状態で学生時代を過ごしました。

大学卒業直後、歯科医師免許証が手元に届く前に出会ったのが、恩師片山恒夫博士でした。

片山恒夫博士

開業後、縁あって直接片山先生の教えを受ける機会に恵まれました。

その際に、自分の歯と噛み合わせを調べ、必要な治療、改善策を講じなさいと言われました。

丸呑み・早食い・下痢軟便から脱するために、改めて自分の歯を治しました。

詰め物や冠は自分の手で技工をして、理想通りに仕上げました。

顎の位置や咬み合わせを、補綴学という学問の理論通りに行い、

下顎の動きも精査し、咬合器という器械で、自分の顎の模型を理想通りにセッティング。

そして、自分の口の中に装着。

上下の噛み合わせの位置はバッチリ。

下顎の運動も、上下の歯をスムーズに滑らせる事ができます。

完璧、完璧。

 

さて、これで何でも美味しく食べられて、ニラもセロリもナスの皮もピシッと噛み切れるはず。

で、食事をしてみると・・・・・。

 

顎はギクシャク、上手く動かず、どうやって食べて良いものやらわかりません。

挙げ句の果てに、気分が悪くなり、目眩までして来ました。

「これはただ事ではないぞ」

ただ口をパクパクして、上下の歯をチョンチョン当てて食べることしかできません。

「何かがおかしい」

っで、即座に奥歯の冠をはずしてしまいました。

すると、スーッと体の力が抜け、顎のギクシャク感がなくなったのです。

楽にはなりましたが、丸呑み・早食い・下痢軟便は改善する筈もありません。

原因は何だ?

色々な学会、研修会に参加し、可決策を模索し続続ける事数年間。

どうも、学んできた「咬む」学問(咬合学といいます)と、実際の食事を美味しく食べる「噛む」ことは違うようだ。

「咬む」と「噛む」は全然違う。

ヒントは、恩師片山恒夫先生の症例写真に有りました。

恩師片山恒夫先生

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